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リポジトリへの最初のコミットは 2013 年 3 月 13 日でした1。
その後、10 年の歳月と 1192 人の貢献者による 27,147 以上のコミットを経て、今日 Electron はデスクトップアプリケーションを構築する最も人気 のフレームワークの 1 つとなっています。 この節目は、これまでの歩みを祝って振り返り、その過程で学んだことを共有する絶好の機会です。
今があるのは、このプロジェクトへ貢献しようと時間に労力を捧げてくださった皆さまのおかげです。 ソースコードのコミットは最も目立つ貢献ですが、バグ報告、ユーザーランドモジュールのメンテナンス、ドキュメントや翻訳の提供、サイバースペースでの Electron コミュニティへの参加など、人々のそういった努力も認めなければなりません。 すべての貢献は私たちメンテナーにとってかけがえのないものです。
記事の続きの前に一言、御礼申し上げます。 ❤️
ここまでどうやって到達できたのでしょうか?
Atom Shell は、2014 年 4 月にパブリックベータを開始した GitHub の Atom エディタ の基盤として作られました。 当時利用可能だったウェブベースのデスクトップフレームワーク (node-webkit や Chromium Embedded Framework) に代わるものとして、ゼロから構築されたものです。 驚くべき機能としては、Node.js と Chromium を組み込むことでウェブ技術向けの強力なデスクトップランタイムを提供していました。
1 年も経たないうちに、Atom Shell の性能と人気は絶大なものになり ました。 大企業、スタートアップ、そして個人開発者たちがこぞって Electron でアプリを作り始め (初期の採用企業は Slack、GitKraken、WebTorrent など)、このプロジェクトは Electron という適切な名前に変更されました。
それ以来、Electron は本格的に活動してきました。 週間ダウンロード数の変化は、こちらの npmtrends.com のご好意によってご覧いただけます。
Electron v1 は 2016 年にリリースされ、API の安定性の向上とドキュメントやツールの充実を約束しました。 2018 年にリリースされた Electron v2 は、セマンティックバージョニングを導入し、Electron の開発者がリリースサイクルを把握しやすくなりました。
Electron v6 では、Chromium と同じ 12 週間の定期メジャーリリースケジュールに移行しました。 この決定はプロジェクトの考え方において「Chromium のバージョンを最新にする」ということを必須事項から優先事項に変えました。 これによりアップグレード間の技術的負債が減り、Electron の更新と堅牢性の維持が容易になりました。
それ以来、Electron の新バージョンを Chromium の安定版と同じ日にリリースするという、よくできた仕組みになっています。 2021 年に Chromium が リリーススケジュールを 4 週間に早めた時には、私たちは肩をすくめて、それに合わせてリリースケーデンスを8週間に増やすことにしました。
Electron は現在 v23 であり (そしてこれからも増え続ける)、クロスプラットフォームのデスクトップアプリケーションを構築するための最高のランタイムを構築することに専念しています。 近年、JavaScript の開発ツールがブームになっていますが、Electron はデスクトップアプリケーションのフレームワークとして、安定しており実戦投入され頑丈であり続けています。 Electron アプリは今やどこにでもあります。Visual Studio Code でプログラミング、Figma でデザイン、Slack でコミュニケーション、Notion でメモ (他にも多くの使用例があります)。 私たちはこの業績を非常に誇りに思うと同時に、助力して頂いたすべての人に感謝しています。
この過程で何を学んだのでしょうか?
10 年という節目を迎えるまでの道のりは、長いものでした。 ここでは、持続可能な大規模オープンソースプロジェクトの運営に役立った主なものを紹介します。
ガバナンスモデルで分散された意思決定をスケールする
Electron が爆発的に普及した後、私たちの克服すべき課題はプロジェクトの長期的な方向性をどうするかでした。 会社や国、タイムゾーンを越えて分散している数十人のエンジニアのチームを、どのように指揮すればよいのでしょうか。
初期の頃、Electron のメンテナーグループはインフォーマルな調整に頼っていました。小規模なプロジェクトでは高速かつ軽量ですが、より広範な協働作業にはスケールしません。 2019 年には、異なるワーキンググループがフォーマルな責任領域を担うガバナンスモデルに移行しました。 これは、プロセスを効率化し、プロジェクトの所有権の一部を特定のメンテナーに割り当てるのに役立っています。 それぞれのワーキンググループ (WG) は、今日ではどのような役割を担っているのでしょうか?
- Electron のリリースの広報 (Releases WG)
- Chromium と Node.js のアップグレード (Upgrades WG)
- 公開 API のデザインの管理 (API WG)
- Electron の堅牢性の維持 (Security WG)
- ウェブサイトの運営、ドキュメント化、ツール作成 (Ecosystem WG)
- コミュニティと企業への働きかけ (Outreach WG)
- コミュニティのモデレーション (Community & Safety WG)
- ビルドインフラ、メンテナーのツール、クラウドサービスの維持管理 (Infrastructure WG)
ガバナンスモデルに移行したのと同じ頃、Electron の所有権も GitHub から OpenJS Foundation に 移行しました 。 元々のコアチームは現在もMicrosoftで働いていますが、彼らはElectronの管理体制を形成する、より大きな協力者のグループの一部に過ぎません。2
このモデルは完璧ではありませんが、世界的パンデミックやマクロ経済の逆風が続く中で、私たちによく適していました。 今後は、Electron を次の 10 年に繋げるために、ガバナンス憲章を改訂していく予定です。
コミュニティ
オープンソースにおけるコミュニティの分野は難しいです。アウトリーチのチームが「コミュニティマネージャー」と書かれたトレンチコートを着た十数人のエンジニアである場合は特に難しくなります。 とはいえ、大規模なオープンソースプロジェクトであるということは、多くのユーザーを抱えているということであり、彼らの Electron に対するエネルギーを活 用してユーザーランドのエコシステムを構築することは、プロジェクトの健全性を維持する上で極めて重要な要素です。
コミュニティの活気を高めるために、どのようなことを行ってきたのでしょうか。
バーチャルコミュニティの構築
- 2020 年に、コミュニティ Discord サーバーを立ち上げました。 以前は Atom のフォーラム欄がありましたが、よりインフォーマルなメッセージングプラットフォームを用意し、メンテナと Electron 開発者間の議論や一般的なデバッグのヘルプのためのスペースを用意することにしました。
- 2021 年には、@BlackHole1 の協力で Electon China というユーザーグループを設立しました。 このグループは、Electron の英語スペースの外でアイデアを出し合ったり Electron について議論したりする場を提供し、中国の活気ある技術市場からのユーザー増加に貢献しています。 また、npm の中国語ミラーである cnpm で Electron のナイトリーのリリースをサポートして頂いたことにも感謝します。
注目度の高いオープンソースプログラムへの参加